• 2012-10-02

科学部探訪

モットーは「科学の面白さを自分たちで探してみる」

西大和学園高校科学部

全国にある科学部を訪問し、そのユニークな活動を紹介する「科学部探訪」。その第1回は、奈良県河合町にある西大和学園高校科学部です。同校科学部のモットーは、「科学の本当の面白さを自分たちで探してみる」。基礎も大事にしながら、新しいことに挑戦する。そして、科学の楽しさを多くの人に伝える――。彼らの活動は多方面にわたっています。

年に10回、子ども向け科学実験教室を開催

 関西圏を代表する進学校・西大和学園高校。科学部のメンバーも有名大学への進学を目指している。しかし、彼らが熱心なのは勉強だけではない。部活も思いっ切り楽しんでいる! 自分たちの活動内容について語る彼らの目は、どれもいきいきとしていた。 
 部員は13名(高2生8名、高1生5名。顧問・西村広展教諭)。高校生に加えて、約30名の中学生も一緒に活動する。中心は、小学生への「科学実験教室」で、毎年4月から9月の文化祭まで、日曜日を中心に計10回程度開催する。多いときには100人くらいの小学生が集まるそうだ。
 「春にテーマを決めて準備するんです。ことしは工作で『ぽんぽん船』(蒸気の実験)や、『さかさコップ』(水の表面張力の実験)などを企画しました。小さい子どもたちがとても喜んでくれるのでやり甲斐があります。だから、準備の段階から、みんなでワイワイガヤガヤ、少しでもいいイベントにしようと知恵を絞っています」(2年生で部長の上田浩平君)
 彼らにとってのメインイベントは9月に実施される文化祭だ。このときは日ごろ行っているだけでなく、新しい実験・発表も加える。ことしの文化祭で、とくに注目されたのは「イカの解剖」だ。イカを細かく解剖し、撮影もして詳しくまとめる。それらをパネルにして、文化祭の当日に発表するのだが、「イカには心臓が3つもある!」には、みんなとても驚いた、という。人間などの哺乳類との違いをしっかり観察できたことは、自分たちの勉強にもなったそうだ。ただし、3杯(イカは1杯、2杯と数える)も解剖したので、強烈な臭いが理科室に充満したことには、ずいぶん閉口したそうだが。

NHKの番組にも出演

 こうしたイベントやその準備のほか、普段の活動としては「薬品当て」や「教科書実験」などを行っている。「薬品当て」は実験をして、色や変化の様子から、それが何かを当てるゲームだ。「教科書実験」は教科書に載っている実験を、自分たちで実際にやってみようというものである。
 「たとえば、教科書では単に『音が出る』と書かれているのに、実際は音よりも衝撃波といったほうが正しいと感じた。そんなこともありました。いつも思わぬ発見があって、教科書実験はけっこう楽しいんです」(2年生の上田雄一朗君)
 割り箸を木炭にする実験では、出てくるタールは「ネバネバ」と教科書では表現されているのにゲル状に近かったり――それだけではない。教科書に書かれている手順どおりにやったのに、うまく実験結果が出ないことも多い。そういうときには、「なぜうまくいかないのか」をみんなで考える。なかなか、うまくいかないことを解明するのは難しいが、調査・探求の過程がまた楽しいのだという。
 実はことし、NHKの『Rの法則』という番組に依頼され、西大和学園高校の科学部はある研究を行った。研究テーマは「どうすれば鹿せんべいをうまく遠くにまで飛ばせるか」。1993年から開催されている「奈良若草山 鹿せんべい飛ばし大会」に向け、どのように投げるのが理論的に正しいのかを見出す、というものだ。
 奈良の代表的な観光地である若草山の斜面に立ち、鹿せんべいを投げる距離を競うのだが、斜面に平行に投げるのがいいのか、斜面ではなく地面に水平がいいのか、あるいはどのようにせんべいを持って投げるのがいいのか。安定性や空気抵抗、割れる条件なども考慮しなくてはいけない。結論は、「せんべいは斜面ではなく地面に対して平行に持ち、投げるのも地面に平行に投げるのがいい(ちょうど、フリスビーを投げるように)」だった、という。なお、この研究結果は「 平成24年度 スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会」において、科学部のメンバー3人が参加し生徒表彰賞を受賞した。
 実際の大会では、科学部の中学生が45メートルという記録を出し、みごと優勝したのだが、彼らは満足していない。
 「追い風や向かい風のように、風の吹き具合などは、まだシミュレートできていないんです。ここの部分はこれからの課題。後輩たちが、もっともっといい方法を見つけてくれると期待しています」
 部長の上田浩平君は、そう楽しそうに語ってくれた。