• 2013-04-04

科学部探訪2

科学は誰にとっても楽しいもの!

宇都宮短期大学附属高校理科部

全国の科学部を訪問し、ユニークな活動を紹介する「科学部探訪」。今回は、栃木県宇都宮市にある宇都宮短期大学附属高校理科部です。大学進学はもちろん、音楽や調理、ファッションの世界を目指す生徒も多いこの学校。理科部のメンバーも、部活動を通して幅広く興味のあることに取り組んでいます。文系進学を目指す人たちもまじる彼らの活動からは、「誰にとっても科学は楽しい」が伝わってきます。

メンバーの多様性がなせるわざ

 普通科をはじめとし、生活教養科、情報商業科、調理科、音楽科といった多様な学科を設けている宇都宮短期大学附属高校では、生徒たちの興味や目指す進路もさまざま。理科部にも、その特徴が表れている。部員は16名(新高3生6名、新高2生10名。顧問・伊藤慎之輔教諭)。理科部だけに、「理系進学を目指す生徒ばかりだろう」と考えるのが普通だが、文系学部への進学を目指す子も多い。「学年によっては、文系の子のほうが多数を占めることもある」(伊藤教諭)という。「実験をやってみたいと思ったから」「先生がすごく面白いから」「楽しそうだったから」――入部の理由も多岐にわたっている。
 記者が取材した日、部員たちは「石けんをつくる実験」を行っていた。ラードやオリーブオイルといった油脂に水酸化ナトリウムを加え、その化学反応を利用するものだ。けん化法といい、市販の石けんの多くはこの方法でつくられているが、材料それぞれの分量や混ぜ合わせる手順、温度の調整など、少しでも条件が異なると出来上がる石けんの様子が違ってくる、難易度の高い実験で、たとえば水の量が少なすぎるとひび割れるし、合わせる油脂の割合によって使い心地も大きく変わる。そんな今日の実験の「目標」は?
 「泡立ちのいい石けん、使える石けんを作ること!」(新3年生で部長の滝本翔太君)
 実験は複数のチームに分かれて行われ、あるチームは過去に行った実験手順を見直すことからスタートした。具体的には、3種類の油脂を順番にビーカーに入れていたやり方を、いっぺんに入れて混ぜ合わせる方法に変えたのだが、結果、最も泡立つ石けんをつくることができた。しかし、そのことに彼らは満足していない。「もっと泡立つものにしないと」「香りもいまいちだものね」など、すぐに次なる課題に取り組み始めた。一方、別のチームではどうやってかわいい形の石けんをつくるかという話し合いが始まり、また別のチームでは大量に石けんを作る際のレシピづくりがテーマになっていた。まさに、議論百出の状態!
 実験の前に伊藤先生が示したのは、分量の目安と簡単な手順だけだ。そこを出発点に、いろいろな事柄、テーマに議論が及ぶのも、理科部のメンバーの多様性がなせるわざといえるのかもしれない。

大盛り上がりだった“空気砲”実験

 宇都宮短期大学附属高校では、昨年(2012年)「夏季理科実験講座」を開催した。東京大学から講師を招き、最先端の技術や機械を使って、毒物が脳へ与える影響をDNAレベルで検証した。さらに各班で研究報告を実施。その際、ノートパソコンやipadなどの電子機器を各自1台ずつ使用しまとめ上げた。ここでも理科部のメンバーが大活躍した。もちろん、文系学部への進学組も参加している。
 また、高校主催の公立中学3年生向けイベント「1日体験学習」(昨年は3日間でのべ5000名が参加)でも、理科部の活動は欠かせないものになっている。「800人も入る大きなホールなので、それを意識して、遠くの人まで見えるよう空気砲の実験をやりました」と新3年生で副部長の三嶋亮仁君。理科部の演示実験は他の出し物にも増して大盛り上がりで、取材当日も記者の前で部長と二人で照れながらその時の様子を実演してくれた。
 文系・理系関係なく活動し、部室内での実験もステージ上での実演も常に楽しんでいる彼らからは、「誰にとっても科学は楽しい」というメッセージが伝わってくる――。この記事を読んでいる中高生のみんな! みんなの学校に理科部があったら、一度、覗いてみてください。文系だなんて関係なし。経験したことのない、楽しい世界が見えてくるかもしれませんよ。