「超教養講座」アーカイブ
越境物質「黄砂」が運ぶもの」
~砂漠からの旅人は“悪者”なのか?
福岡大学理学部 教授 林 政彦
黄砂は大陸の砂が風で巻き上げられ、日本まで飛んでくる現象です。「洗濯物が黄砂でダメになった」など一般には“やっかい者”とされており、近年では、花粉症の症状をひどくするなどともいわれています。その一方で、「中国大陸で発生した汚染物質を黄砂が中和して被害を抑えている」、また「黄砂は地球の温暖化を抑える働きをしている可能性もある」といった研究もされています。このような黄砂に関する最新の研究成果を福岡大学の林政彦先生に解説してもらいましょう。
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アイデア次第で可能性を広げる
モノづくりの“革新兵器”3Dプリンター
芝浦工業大学デザイン工学部 教授 安齋 正博
印刷するような感覚で立体物をつくることができる「3Dプリンター」に熱い視線が注がれています。家庭向けが登場したことによって、アイデア次第で誰もがメーカーになることも可能になりました。「モノづくり革新の秘密兵器」などと呼ばれるのは、そのためです。しかし、『未来型の装置』などではなく、技術自体は昔から存在していたことは意外と知られていません。こうした誤解がいくつかあるものの、モノづくりの可能性を広げていることは確かです。果たして3Dプリンターは、どんな可能性を私たちにもたらしてくれるのでしょう。
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細胞が自分を食べる「オートファジー」
病気にも深くかかわる生命現象の謎に迫る
大阪大学医学部 教授 吉森 保
iPS細胞などの再生医療と同様、世界中の研究者がしのぎを削る、ホットな研究分野「オートファジー」。日本語では「自食作用」と訳され、細胞の中で行われるリサイクル・システムを指します。がんやアルツハイマー病といった病気の解明・治療にもつながると期待され、その研究はノーベル賞級といわれるほど。しかも、リードしているのは日本の研究者たちです。大阪大学の吉森先生もその一人。吉森先生と一緒に、さまざまな生物に共通した「根源的な生命現象」の謎に迫ってみましょう。
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環境浄化とリサイクルを革新する
古くて新しい「選鉱」技術
早稲田大学創造理工学部 准教授 所 千晴
さまざまな電化製品に満ち溢れ、世界中の人とのコミュニケーションまで容易になった現代社会。しかし、文明の発達は環境への負荷を伴います。また、近年はレアアースなど限られた資源の有効活用も問題となってきました。早稲田大学の所先生は、世界が抱える、この2つの難問の解決に取り組んでいます。武器は「ミネラルプロセッシング」。日本語では「選鉱」と呼ばれ、鉱山に関わる古い技術ですが、21世紀になったいま、再び脚光を浴びるようになってきました。それを使えば何が実現できるのか、どのように私たちの社会を変えるというのでしょう。